音楽に生きる

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 ゴールデンウィークが終わって、また賑やかな日々が戻ってきました.
 
 ところで、私事ですが、この4月からは実技レッスンや試験の審査に加えて新たに責任の重い仕事を任されるようになりました.今はちょうど一ヶ月ほど過ぎたところですが、覚えなければならないことも多く、準備や段取りが悪いとすぐ目が回りそうになってしまいます.ただ、同僚の先生方や、事務方の皆さんが親切にいろいろと教えてくださるので、救われるというか、つくづく有り難いなと思います.
 

 さて、タイトルに 「音楽に生きる」 と書きましたが、「音楽で生きる」 ではありません ― 後者はこれから音楽を生業にしようと考える人たちにはしっくりくるものかもしれません ― 音楽をすることを手段として音楽中心の人生を味わったり、誰かの役に立てたらいいなと考える‥それが 「音楽で生きる」 こと.一方、「音楽に生きる」 は今の僕の中では全く異なる意味として捉えています.別にどちらが正しいとかそういうことではありません.個人的な話ですが、今日はそのことを書こうと思います.
 

 僕が 「音楽に生きる」 ということを意識し始めたのはおそらく32歳の頃からだと思います.ちなみにそれまでは、音楽は僕にとって生きていくための職業でもあり、ライフワークでもあり、人生の大半を占める伴侶のようなものでした.もっとも、今もそうした感覚が無くなったわけではありません.けれども、ある時から「自分にとって音楽とは何なのか?」という問いが、それこそコペルニクス的にひっくり返って、 「音楽の中にある自分とはなんなのだろう??」 という問題にすり替わってしまった‥それが今から5, 6年前と記憶しています.そうこうしているうちに、音楽に生きる、もう少しわかりやすく言うと、音楽の中に生かされているような感覚が芽生えてきて、昨年の夏を過ぎたあたりからは自分の中でもはっきりとそれを認めるようになりました.
 
 正直、感覚というのはとても扱いづらいというか、うまく人に説明できないところもあるのですが、あえて言葉にすると、音楽というとても大きな流れのほんの一部分に過ぎない自分を受け入れているということです.わかりやすく言うと、音楽芸術はある意味で宇宙のように果てしなく広く、どこまでも深い.だから、自分でそれを意のままにコントロールしようとするのではなく、その中で自分がどう振る舞うべきかを一歩引いて考えたり、どうにも上手くいかない時には、我執を捨てて、その大きな流れに身をゆだねてみる.平たく言えば謙虚に生きるということなのでしょうが、それはほどほどで諦めたり、挑戦しないということではありません.やっぱり説明するのは難しいですね、、汗
 

 一つはっきり言えることがあるとすれば、僕が「音楽に生きる」という感覚が持てるようになって自分が変わったなと思うのは、以前よりも不安や恐怖心(イライラ)が減ったことです.もちろん、レッスンやコンサートがうまくいかなくて落ち込むことはあるし、基本的に仕事はとてもハードなのでグッタリ疲れることもあります.けれども、自分が音楽の大きな世界に包まれていると感じることでいい意味で拘りがなくなるというか、ことさらにそれを不満に感じることなく比較的おだやかな心で過ごせるようになったのだ思います.
 

 我ながら、書いているうちになんだかお坊さんの法話みたいになってしまいましたね、、苦笑

 

ゴールデンウィーク中に初めてラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに行ってきました.
ハイドン、ブラームスの室内楽と、桐朋学園オーケストラのステージを堪能できて良かったです.
 
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2件のコメント

  1. ☆こんばんは☆

    お坊さんの法話みたい…先生の考え方はとても真面目なところがあって、そんなところが私は好きです。。

    そういえば、以前のブログに、ムラサキケマンのお話し(視点を変えてみること)があったの思い出しました。。
    今回のブログに、どうにも上手くいかない時には我執を捨ててその大きな流れに身をゆだねてみる…と書いてありますが、、
    音楽とは関係ないかもしれませんが、
    私自身は若い時に「私の人生はこんなはずじゃなかったのに…」と布団かぶってグズグズしてることが多かったのですが、ある時、せっかくの人生がもったいないなぁ…と思って「こんな人生もあるもんだ、この経験がいったいどんなことに繋がっていくか楽しみだ」と考えてみるようになってからは、自分が変わったというか、気持ちがラクになりました。これは受け入れることがようやくできた、ということですかね?

    先生の説法(説教?)を楽しみにしています!

  2. こんにちは。
    今日はこちらはとても暑いです!30度以上いっているかもしれません(涙)。

    今回のエントリー、「音楽」に生かされている川村さんのお気持ちがたっぷり詰まった内容ですね☆
    音楽という大きな世界観の中で、以前より安心感を持って仕事に臨めるようになったのかな・・・と想像しています。

    今回のお話を読んで、私も思い出したことがあります。
    今から3年くらい前でしょうか☆
    カウンセラーの資格が取れた時、私は「これでカウンセラーになれる!」という気持ちでいっぱいでした。
    でも、実際に仕事で業務をした時、思ったのです。
    「あぁ、私はカウンセラーになったんじゃない。『カウンセラーとして生きる』んだ」と。
    そう思った途端、なんという世界に飛び込んでしまったのだろう!と少し怖くもなりましたが(苦笑)、今はカウンセラーとして生きていくことに少しずつ心が馴染んできています。

    川村さんも、「音楽家になる」「指導者になる」のではなく、「音楽家として生きる」「指導者として生きる」、そんなお気持ちでもあるのかな?と思ったりしています。
    そのあたりを、またレッスンの時などにお茶っこでもすすりながらお話出来たら幸せです。

    (追伸)
    ゴールデンウィークもあっという間に終わってしまいましたネ。アヤ

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