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6月になりました

 今日から6月になりました.ということは、あとひと月で今年の半分が終わるということです.本当に信じられません.いや、もっと以前から 「月日が経つのがはやい」 という実感はありました.けれどもその頃はまだ自分の時間もそれなりにあったせいか、それに対してあまり気に留めていませんでした.
 
 けれども今は状況が変わり、若い頃とはまったく異なる焦りを覚えることもしばしば.というのも、あと30年、長くて40年生きられたとして、その間に、僕が有意義に音楽を学べる時間、或いは家族や友人と会えるチャンスがどれくらい残っているのかと考えると、正直不安を感じずにはいられないからです.幸か不幸か僕は計算があまり得意ではないので、まぁあくまでも想像の範疇で済んでいますが.
 
 いずれにせよ、職業音楽家という道を選択した以上は、自分の人生に残された 「真に自由な時間」 は、もうあまり多くはないということをどこかで覚悟しておかねばと思っています不平不満を言ったり、後悔したり、ましてや他人を非難したり恨んだり‥そのようなことに時間を費やしている暇があったら、与えられた目の前のことに最善を尽くせるよう努めたい.そんなふうに考える今日この頃です.
 

 さて、お陰様で先月は東京工業大学管弦楽団 第154回定期演奏会、そしてショパンフェスティバル in 表参道のピアノリサイタルを終えることができました.たくさんのご来場、誠に有り難うございました.
 
 自身の演奏についてはいろいろ思うところはありますが、東工大オケと共演させて頂いたベートーヴェンの 「皇帝」 では学生の皆さんの集中力もあって、心からアンサンブルを愉しむことができたように思います.余談ですが、この作品は僕が初めてオーケストラと一緒に演奏した最初のピアノ協奏曲です.もう20年以上も前になりますが、当時僕は高校1年生で、その頃はとにかくソロパートを弾くことで精一杯‥その後も何度かこの作品を弾かせて頂く機会に恵まれ、その都度いろいろな課題と対峙してきましたが、今回は初めて、これまでになかった手ごたえを感じることができました.
 

 また、云年ぶりとなる東京でのオールショパンプログラムは、ショパンやショパンの作品に対する想いが深まると同時に、それらを他者に伝えることの難しさや責任の重さ(教育的なことも含めて)を改めて実感しました素の自分が感じていることを聴き手も同じように理解し、共感してくれたらどんなに幸せかと思いますが、残念ながら現実はいつもそうとは限りません.とは言え、20代の頃に比べればそのギャップはだいぶ埋まってきているようにも感じます.やはり演奏を通して作品だけでなく聴衆とも根気よく向き合うこと、そしてそれを継続するということが大切なのでしょうか‥
 

 さて、最後に今月のコンサートの告知をさせて頂きます.夏以降は別のプログラムに集中するので、ショパンは今年はこれで弾き納めになると思います.また、当日はお話を交えながらアットホームな雰囲気でお楽しみ頂けたらと考えています.ショパンフェスティバルに来られなかった方、もう一度ショパンを聴きたい方、この機会に如何でしょうか?

 

<モーツァルトを楽しむ会 レクチャーコンサート vol. 14 川村文雄 ショパンの世界>
日時: 2016年6月11日(土)
会場: 高津市民会館 大会議室 (神奈川県川崎市)
曲目: オールショパンプログラム
幻想即興曲 op. 66
ノクターン 第8番 変二長調 op. 27-2
練習曲 変イ長調 op. 25-1 『エオリアンハープ』
練習曲 ホ長調 op. 10-3 『別れの曲』
練習曲 イ短調 op. 25-11 『木枯らし』
幻想曲 ヘ短調 op. 49
その他

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※チケットはオフィシャルウェブサイトのお問い合わせからも受け付けております.

 

それでは、当日会場で皆さまにお会いできることを楽しみにしています!

 

近々のコンサートの告知

 今日は久しぶりに家でなだらかな一日を過ごすことができました.これで首・肩の強張りがラクになれば言うことなしなんですけどね.どうでもいいことですが、さっき昆布茶を飲んでいて、そろそろ昆布茶も厳しい季節になってきたなと明確に感じました.今の袋を飲み切ったら、また涼しくなるまで待とうと思います.
 
 さて、来週からコンサートが続くので宣伝をさせて頂きます.チケットのご予約はウェブサイトからのお問い合わせやメールでも対応させて頂きますが、いずれの公演もお席に限りがありますのでお早めにご連絡頂ければ幸いです.

 

<東京工業大学管弦楽団 第154回定期演奏会>
日時: 2016年5月21日(土)18時00分開演
会場: めぐろパーシモンホール 大ホール (東京都目黒区)
入場料: 1,000円
曲目:
ウェーバー / 『魔弾の射手』より 序曲
ベートーヴェン / ピアノ協奏曲 第5番 『皇帝』
ドヴォルザーク / 交響曲 第9番 新世界より
指揮: 末永隆一 オーケストラ:東京工業大学管弦楽団

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<ショパン・フェスティバル in 表参道>
日時: 2016年5月24日(火)19時開演
会場: カワイ表参道 コンサートサロン 『パウゼ』 (東京都渋谷区)
入場料: 3,000円
曲目:
~響き合うエチュード~ オールショパン・プログラム
2つのノクターン op.27
練習曲 変イ長調 op. 25-1 『エオリアンハープ』
練習曲 ハ長調 op. 10-7
練習曲 ホ長調 op. 10-3 『別れの曲』
練習曲 ホ短調 op. 25-5
練習曲 イ短調 op. 25-11 『木枯らし』
練習曲 変ホ短調 op. 10-6
練習曲 ロ短調 op. 25-10
幻想曲 ヘ短調 op.49
ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 op.58

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それでは当日、皆さまにお会いできることを楽しみにしています.

 

(追記)
5月9日より募集をしているピアノフォルテ上大岡のエキスパートレッスンですが、9月18日(日)に若干の空きがあるようです.これから受講をご希望の方はお早めにお申し込み頂ければ幸いです.
 

(追記2)
9月までのエキスパートレッスン枠は、お陰様で5月16日をもって全て埋まりました.今後はキャンセル待ちのみ受け付けます.
 
また、ショパンフェスティバルにお越し頂ける方でチケットを予約されていない方はお早めにご連絡頂ければ幸いです.

 
 

学ぶ意欲と刺激し合える喜び

 ゴールデンウィーク、皆さま如何お過ごしでしょうか.
 
 僕は昨夜遅くに志賀高原の合宿から一足先に帰京しました.こちらで行われている東京工業大学の合宿に参加せて頂くのはこれで3度目になりますが、今回はお天気にも恵まれてとても幸運でした.

 

写真だとわかりづらいのですが、1枚目はダケカンバで2枚は白樺

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 さて、音楽を続けていく中で、学ぶ意欲が自身の成長にとって不可欠であることは言うまでもありません.言うまでもない、つまり当たり前のことなのですが、その当たり前が実際なまなかではないこともあって、後進のためにも僕の思うところを書いてみようと思います.
 
 僕は現在、10代の後半から20代前半の学生たちを主に指導しています.その大半は将来的に何らかの形で音楽と関わっていくことを希望しています.そこで僕が度々感じることは、ピアノや音楽の道を志すこの世代の学生たちは、自分の教え子に限らず、今一度これまでの学習のあり方を根本から見直すべきではないかということです.
 
一般的に、小・中学生あたりまでは自分の親や先生に褒めてもらったり、コンクールなどで他人から認めてもらうことが勉強のモチベーションに繋がることが多いと思います.また、なんとなく周りの友達がやっているから‥というのも音楽を学ぶきっかけや理由になり得ます.それはある意味とても自然なことだし、結果的に学習が捗ったりピアノを弾くことが楽しくなるのであれば、大いに結構なことだと思っています.僕自身もそうでしたが、小さいころはなんだかんだで身近な人たちとの関わり合いが人生の大半を占めていますし、そもそもそのような年頃には自身を取り巻く社会のことなど普通は気にも留めませんから.
 
 けれども今は時代が変わって、まだ自分でものを考える力が発達していないころからやれ受験だとかその先の就職だと躍起になっている子たちも少なからずいるようです.本題ではないのでここでは深く掘り下げることはしませんが、敢えて僕が言っておきたいのは、自分が社会の一員として何をなすべきか、そのうえで将来的にどんな人間になりたいのか、そうしたことをきちんと考えられない年齢の子どもたちに対して、例えば 「音楽とはなんぞや」、 「人生とはなんぞや」 と考えろと言っても土台無理な話だということです.もっとも、だからといって即物的な成果主義に走って欲しくはないのですが‥
 
 で、話を戻すと、僕が主に指導をしている学生たちは、今まさにそうしたことを自らに問いかけていかなければならないところに来ています.少なくとも年齢的には、自分の人生に責任を持ち、音楽を学ぶということがどういうことかを自覚を持って考えられなければいけない
そこで、余計なお世話かもしれませんが、僕がちょっと心配しているのは、自らの意思で音楽と向き合いながら自我を確立していくこの大切な時期に、音楽をする意義を見つけることができずに宙ぶらりんになってしまったり、本当の気持ちを偽ってフェードアウトしていく人が存外多いということです.
 

 もっとも、先々の仕事や収入、社会的ポジションを考えると夜も眠れない‥そのような不安に駆られることは僕も重々承知しています.でも、だからといって手堅い道を選択することでその人が幸せになれるという保証はどこにもありません.さらに付け加えるなら、職業音楽家としての地位を得てお金を稼いでいる人たちの中には、音楽そのものを心から愛していない人たちもいます.奇妙に感じられるかもしれませんが、社会とはそういうものです.
 
 
 誤解をしてほしくないのは、僕はそういう方々を責めるつもりでこれを書いているのではありません.そうではなくて、将来のある学生たちには、これから自分で自分の人生の舵を取っていくにあたって、音楽と共にどのように歩んでいきたいのかをできるだけ具体的に、真剣に考えて欲しいのです.そのためにも広く世の中を見渡し、好き嫌いや損得勘定を抜きに、できる限り多くの人たちと交流を深めて欲しい.もしかしたらその分のわずらわしさや気苦労はあるかもしれませんが、きっと、自分がどんなふうに生きていきたいのかがそこから見えてくると思います.
 

 今の僕が恵まれていると感じるのは、自分の周りにプロ・アマ問わず 「学ぶ意欲」 に溢れた音楽家がとても多いことです.もちろん、ご縁もありますが、それだけではありません.お互いに刺激し合えることに純粋に喜びを感じて、それがまた音楽をするモチベーションになることを知っているからこそ同じような人間が集まっているのだと思います.
 
 個人的な話になりますが、東工大オケをはじめとするアマチュアの学生オーケストラ、市民オーケストラはその良い例です.こう言っては失礼かもしれませんが、彼らは 「本業」 ではないにもかかわらず、音楽を学ぶことに対して驚くほど貪欲で、前向きで、とても謙虚です.当然ながら僕もそこから多くの刺激を受けていますし、今でも学ぶことが尽きません.大袈裟でもなんでもなく、これは僕にとっては立派な財産の一つだと思っています.
 

 これから音楽を志す人たち、とりわけ思春期を過ぎて専門的な勉強をしている学生たちには、普段から自発的で積極的なモチベーションを維持するために自身が何をすべきかを改めて考えてもらいたいと思います.そのためにも、世代や立場を越えた幅広い交流の場を持つことは欠かせません.個人にできることは所詮は限られていますが、互いに刺激し合える仲間が集まれば結構おもしろいことができますからね.いずれにせよ学ぶ意欲を持ち続けることができれば音楽は続けるほどに愉しくなります.これは身をもって経験していることなので間違いありません、、笑

 

さて、明日からまた学校が始まります.気を引き締めて頑張ります.

 

4月は怒涛の如く

 熊本県・大分県地方の地震が収まりません.ニュースを見ながら被災された方やそのご家族の方々のお気持ちを考えるとやはり複雑な気持ちになってしまいます.けれども同時に、なにか自分にできることはないかという気持ちが独り歩きして自らの行動が空回ることのないよう、今は自身に課せられた仕事に集中することを心がけています.これは5年前の東日本大震災から得た教訓です.被災地の方々に一日も早く平穏な暮らしが戻ることを祈りながら、必要以上に心乱さぬ生活を心がけ、目の前のやるべきことに集中する.支援はしかるべき時に‥今はそんなふうに考えています.

 

 さて、大学が新年度を迎えて3週間が経過しました.明日から5月になりますが、心なしか今年の4月はいつにも増して慣れない仕事に追われた日々が続きました.そんな中、先週はザ・パシフィックハーバー(徳島)にて開催されたマンスリーディナー倶楽部のイベントに出演させて頂きました.今回も昨年と同様、コンサート後には古典のフレンチと各お料理に合わせた王室御用達のワインが振る舞われ、いらしたお客さまと共に良いひと時を過ごすことができました.その翌日は10年以上も前から度々演奏させて頂いているケアハウス田園の田園ホールで、急遽プライヴェートコンサートをさせて頂きました.心ある恩人たちを前に、あたたかいような、せつないような、そんな不思議な気持ちを抱きました.

 

ザ・パシフィックハーバーと田園ホールのグランドピアノ
 
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 せつないと言えば、徳島の後は福井の実家で週末を過ごしたのですが、最近、妙に親のことが気になるようになってきてしまいました.いつか両親と別れる日が来るということが、単なる頭の中の理解ではなく、ひしひしと実感するようになったというか.別にそのことが哀しくて仕方がないというのではありません.ただ、僕のピアノのために休みなしでずっと働き続けてきてくれた両親ですから、二人の元気なうちに一緒に出かけたりゆっくり食事をする機会をできる限り持ちたい‥でも、あとどれくらいしてあげられるのか‥そんなことを考えているとなんともせつなくなってしまうのです.まぁそうは言っても、僕は自分の家庭を持っていませんから、仕事のやりくりさえすればまだまだ親にしてあげられることはあります.そんなふうにポジティブに考えていこうと思います、、笑
散歩中に見つけたシャガと荒れ放題の川村家のフジ

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 そして今週はチェリストの松波恵子先生との初合わせ、さらに東京工業大学管弦楽団との初合わせがありました.アンサンブルをしていると、「音楽って本当にコミュニケーションなんだなぁ」 と、つくづく感じます.それこそ20代前半の頃は、音楽にはコミュニケーションが不可欠であることを頭で理解しながらも、演奏を通して作品を他者に伝えるということがどういうことかを深く考えたり、他人の気持ちを汲みとりながら研鑽を積んでいたとは到底言えない‥もう恥ずかしいくらいに自分のことしか考えていなかったので.ちなみに、今はソロのピアノ曲を演奏する際でも、一人でアンサンブルをしているような感覚が自然と起こるようになりましたが、それでもなお、室内楽やコンチェルトにはソロにはないスリルや奥深さが多くあるように感じています.

 

 最後になりますが、今月は10年来の師でもあるディーナ・ヨッフェ先生が来日され、5年ぶりに日本でリサイタルを開催されました.恩師であられるヴェラ・ゴルノスタエヴァ女史の追悼コンサートということでしたが、ヨッフェ先生のお人柄がうかがえる内容で、怒涛の如く過ぎ去る4月の終わりにとても幸せな気分に浸ることができました.ファツィオリも大変気に入られたようで、今後また拝聴できる機会が増えたら嬉しいです.

 

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それでは皆さまどうぞ良い連休をお過ごしください.

 

ピアノ合宿 in 別府 ~ 観光編

 合宿の最終日は別府観光です.ここまでくると 「さぁ、あとは気楽に楽しむぞ!」 と思いたいところですが、実際には参加者の引率や監督責任があるのでそこまではしゃぐわけにもいきません.それでも午前中はスタッフが付き添ってくださったのでまだ良かったのですが、午後は内心気もそぞろというか、ゆとりがないというか‥子どものころの遠足や修学旅行の担任の気持ちが痛いほどわかりました、、汗

 

というわけで、とりたてて書くべきものはないので写真で振り返りたいと思います.
 

まずこちらは、滞在中に僕が泊まった旅館の若桜荘.
 
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 鉄輪にはこうした趣のある貸し間・旅館が無数にあって、僕もこれまでいくつもの貸し間にお世話になりました.余談ですが、写真の左に流れている用水路のような川は、掛け流しの温泉で余ったお湯を流すためにあるそうです.そして野生化したグッピーがわんさか生息しているとのこと.温泉街らしいですね.

 

 そして別府と言えば、やはり 「地獄めぐり」 です.今回は鉄輪から歩いて行ける距離にある鬼山地獄(ワニがうじゃうじゃ居ます)、山地獄、海地獄に行きました.
 

下の写真は山地獄と海地獄.
※「地獄」 は現地で温泉の意味です
 
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 ちなみにランチはコンサート前日にもお邪魔したレストラン三ツ星さんでみんなで名物のオムライス(ランチ限定)を食べました.写真はありませんが、とっても素敵なお店です.オススメです.

 

 午後は別府の誇る水族館「うみたまご」に初めて伺いました.別府はこれまで何度も足を運んでいたのですが、どうもコンサート前後には行く気になれなくて‥今回やっと悲願を叶えることができました.生徒に感謝しないといけませんね.うみたまごはコンパクトながらもよくできた水族館です.某女流ピアニストもお気に召したとか.

 

別府湾の海水で世界中のあらゆる魚が共存しています.
 
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飼育員と一緒に外を散歩しているペリカン(とてもシュールな光景)が気になっているのは‥
 
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日向ぼっこ中のアザラシ.一瞬、生徒たちのことが頭から吹っ飛びそうになりました.
 
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最後に別府湾を眺めて、最終便で無事に羽田に到着.
本当にあっという間の4日間でしたがとても有意義でした.
 
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改めて今回お世話になった皆さま、本当に有り難うございました!

 

(おわり)

 
 

ピアノ合宿 in 別府 ~ 講座&グループレッスン編 その2

 引き続きピアノ合宿です.2日目の午後は、ピアノを取り囲むようにして4時間弱ほどグループレッスンを行いました.
 
 グループレッスンでは、それぞれの作品のスタイルや音型に適していると思われる肘や手首の使い方に焦点を絞りました.ペダルを除くと、言うまでもなく、楽器と自分との接点は常に指先にあります.けれども、意識が小手先に片寄っているうちは ─ それでも自身の指の動きに気を配れるだけまだいいほうかもしれませんが ─ いくら練習を積んでもありきたりな音しか出せません
 

 もっとも、僕自身は、ありきたりな音しか出ないことそのものよりも、ありきたりな音しか出ていないのにそこに注意が及んでいない状態のほうが問題としてはより深刻と考えています.ですから、奏法を知ることはもちろん大切なのですが、それを習得するためには常に自身の耳が研ぎ澄まされていることが必要で、そのことを前提に指導をしているつもりです.しかしながら、狭いレッスン室の中で、しかもマンツーマンのレッスン形態でそれを実感してもらうには正直限界があります.実際、グループレッスンの参加者の感想で 「普段のレッスンで指摘されていたことがようやくわかった」 という意見が少なくなくありませんでした.彼らが今後どのように変化していくのかはまだわかりませんが、少なくとも僕にとってはグループレッスンのメリットを十分に感じ取ることができました.
 

 また、当初は想定していなかったものの、もう一つのグループレッスンの効果として、下記の 「気付き」 がありました.個人的にも改めて深く考えさせられたことですが、それは次の2点です.
 
1.同じアドヴァイスでも、理解の仕方や受け止め方は人によって異なる
2.理解の仕方や受け止め方が同じでも、実際のアプローチは人によって異なる
 
 文才がないのか、こうして文字に起こしてみると、何かこう今一つ盛り上がりにかける感がしないでもないのですが‥まぁそこは読んでくださる方の想像力に期待したいと思います、、汗
 
 つまるところ、奏者として、或いは指導者として長く成長し続けるためには、「事実を客観的に、正しく理解すること」 が重要なのではないかと.もっとも、音楽で他者に何かを伝えるためにはある種の 「思い入れ」 が不可欠です.けれどもそこに自分よがりなクセが混じってくると、それは 「単なる思い込み」 で終わってしまいます ─ 齢をとると妙に実感するのですが(というか、そんな前置きをしている自分がちょっと切ない‥)、自ら作り上げた固定観念に縛られている時ほどしんどいものはありません ─ 反対に、その思い込みから抜け出し、周囲のさまざまな差異や変化を認めながら自らの考え方や弾き方を改めていくことで、音楽がより奥深く感じられるのではないでしょうか.
 

 早いもので大学も新年度を迎えました.また気持ちを新たに頑張りたいと思います.

 

滞在中、朝の散歩で別府・鉄輪を一望しました.
2枚目の写真は両親の滞在したホテルの部屋から.
 
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ピアノ合宿 in 別府 ~ 講座&グループレッスン編 その1

 ピアノ合宿の2日目は朝から夕方まで、じっくり時間をかけて講座やグループレッスンを行いました.
 
 まず午前中は、2, 3名ずつの班に分かれて予め指定した課題を含むいくつかの作品を分析してもらい、ランダムに発表しながら皆でより良い演奏のあり方を模索しました.ただし、「分析」 という言葉で拒絶反応を起こされたり、逆にヘンにのめり込まれても困るので、楽曲分析はあくまでも実践を重視した基本的なものに留めました.
 
 一例を挙げると、メロディーラインや縦の音の配列から作曲家の想定した具体的な響きを想像することや、作品全体、或いは各パラグラフ・フレーズの中心点(重心)を見据えて、前後の音楽的なエネルギーの変化を考察すること等 ─ もっとも、和声分析をはじめ入念なアナリーゼによって得ることのできるある種の作品への理解の深まりを否定はしませんが ─ 今回はあくまでもホールのピアノを使いながら、自分たちの解釈がどのように響き渡るのかをリアルタイムに実感してもらうことを主目的としました.

 

前日にコンサートをしたホールなので緊張感があります‥
 
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 ちなみに、取り上げた作品は、マスカーニの「間奏曲」 (オペラ 『カヴァレリア・ルスティカーナ』 でおなじみですが、原曲はなんとピアノという‥)、ブルグミュラーの18の練習曲から「アジタート」、「ゴンドラ漕ぎの歌」、そしてモーツァルトのソナタK. 311 の第2楽章の計4曲です.自分で選んでおきながらなんですが、正直、物足りなさを感じるであろう選曲であることは否めません.というのも、いずれも弾き方さえ教えれば小学生でも演奏は可能で、音大生なら初見で弾けてもおかしくないような曲だからです.
 
 ところがどっこい、実際にやってみるとたったこれだけの課題でもほぼすべての曲でタイムオーバー.とはいえ、まぁそれほど驚くことでもありません.そもそも、いざその場で楽譜を渡されて自力で一から音楽を構築していくとなると、思ったほどは曲のイメージが頭に浮かんでこないものです.ましてや演奏ともなれば、作品云々より自分の弾き方が聴き手にどんな印象を与えているかに気を取られてしまい、音楽の内容を伝えたり共に愉しむどころでなくなってしまう.良し悪しは別として、それが普通です.でも、もしも事情を知らない方がこの場に同席されていたら、「前日の発表会ではもっと難しい作品をのびのびと演奏していたのに一体どうして?」 と不思議に思われたかもしれません‥
 

 もうお分かりかと思いますが、これが今の一般的な生徒たちの本当の意味での 「音楽の実力」 と僕は認識しています.もちろん、一人一人がこれから変わろうと努力すれば良いわけで、現状をそこまで悲観したり嘆くつもりはありません.それに、ここに至るまでの教育や社会的背景を考えれば、決して彼らばかりに問題があると責めることはできません.けれども、いずれにせよ、このままいつまでも借り物の演奏を続けたり、先生のアドヴァイスをただ素直に聞くばかりでは、音楽をするうえでもっとも大切で不可欠なスキルを身につけることのないままクラスを卒業していくことになる.それだけは絶対に避けたいので、僕は彼らが自分たちの課題と正面から向き合い、それを克服するために必要な経験を自発的に重ねていくきっかけを与えたいと常に考えています.そしてこの合宿ではそれを今の僕なりに精一杯体現したつもりです.果たして伝わったのか、届いたのかは残念ながらまだ少し懐疑的ですが(なにしろ初めてなものですから).

 
 ちなみに、念のためですが、上記の 「経験」 とは、ひたすら難しい作品にチャレンジしたり、早く曲をマスターするために初見の能力を鍛えるといった荒業のことを指すのではありません.僕が自分の教え子に望んでいることは、あくまで音楽に深く共感したり、心から感動できる要素を自らの力で作品の中から見つけだせるようになることです.したがって、より重視するのは音楽作品そのものに対する洞察力や想像力を高めるための実践的な経験です.
 

 経験 ─ 体験したことから自ら学んだこと ─ が、その人の 「感性」 や 「審美眼」 に影響するのであれば、長くピアノを続けていくにあたって、意義のある経験を積むことがいかに大切であるかは自明です.それぞれのライフステージよって感じ方は異なるでしょうが、生徒たちがその時その時に本当に伝えたいもの、或いは伝えるべきことを自覚し、自分なりの音楽のヴィジョンを持つ─ もっともこれが本来のクラシック音楽の演奏の初めの一歩となるのでしょうが ─ そうして自身の力で音楽と共に歩んで行けるようになってくれたら本望です.

 

 と、つらつら書いているうちに疲れてきたので、グループレッスンについてはまた改めて.

 

(つづく‥)

ピアノ合宿 in 別府 ~ コンサート編

 前泊を含め延べ4日間にわたるピアノ合宿 in 別府 をお蔭様で無事に終えることができました.連休にもかかわらずホールや宿泊施設の手配を快く引き受けてくださった冨士屋さん、そしてコンサートの進行はもとより、偏食する学生たちのために栄養満点の夕食を作ってくださったトータルブレインのスタッフの方々、さらに合宿を盛り上げてくれた全ての皆さまに心から感謝致します.
 

 ところで 「なぜにピアノ合宿なんですか?」 と、いろいろな方に尋ねられました ─ まぁ悪意はなくとも素朴な質問に真剣に答えるにはとてつもないエネルギーが要るもので ─ その都度つい 「もののはずみで‥」 などといい加減に答えていましたが、それはもちろん冗談です.本当は、僕自身が従来の、或いは今の教育プログラムやレッスンのスタイルにある種の限界を感じていたからです.正直、教え始めて間もない頃の自分は、レッスンを通して曲のつくりやピアノの弾き方を一方的に伝えることでどこか満足していました.あまり認めたくはないのですが、その頃はピアノや音楽を通して彼らがなにを感じているのか(或いはいないのか)ということを省みず、ただ教えている自分に酔っていたようにも思います.
 
 けれども、音楽大学の仕事に少しずつ馴染めるようになった3, 4年ほど前からは、「このようなやり方を続けていては生徒たちがこの先も音楽的に自立できないまま終わってしまうのでは?」 と危機感を抱くようになり、また、自分の中でも 「単にものを説明するだけの先生では終わりたくない」 という想いが募るようになりました.仕事が人を育てるという言葉がありますが、今振り返ると、桐朋学園で教鞭を取るようになったことで一指導者として成長させて頂けたように感じます.
 
 と、まぁそうした経緯があって今回のピアノ合宿と相成ったわけですが、当然ながら僕一人ですべてを賄うことはできませんので、古くからお付き合いのある(なんと学生時代から!)大分の方々のご協力を得ながら、約半年の準備を経てようやく開催にこぎ着けました.めでたしめでたし.
それでは初日に行われた門下生による発表会とリサイタル、そしてプライヴェートコンサート等を写真でゆるりと紹介したいと思います.

 

まずは会場のある冨士屋さん、登録有形文化財です.
 
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中はカフェにもなっていて、レトロな趣がとっても素敵です.
学生たちがはしゃいで物を壊したりしないかヒヤヒヤしました‥
 
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前日18日は生憎の雨でしたが、コンサート当日は快晴.
鉄輪のいたるところで僕のチラシを見かけました.
 
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17名の門下生による発表会では、初めての会場にもかかわらず、皆ホールの
響きを生かしながらのびのびと演奏していたように思います.改めてお疲れ様でした.
 
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教え子たちの発表会に続いて僕のリサイタル.毎回聴きに来てくださる方も
いらっしゃって満席でした.それにしても生徒の前で弾くと妙な緊張をしますね‥

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そして夜は愛すべき子どもたちにささやかなコンサート.
 
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本当に盛りだくさんで有意義な一日でした.
(つづく‥)

明日から別府です

 年をとるにつれて回復力が落ちるというのはどうやら本当で、述べ9日間にわたり ─ どうしてもやらなければならない最低限の仕事のみこなしつつ ─ グズグズ&モソモソしてしまいました(丸4日もピアノが弾けないなんて!).やはり身体がままならないと気持ちまで萎えてしまってダメですね.お陰様でだいぶ良くなりましたが、心身一如、まだまだ人としての修行が足らないようです.
 
 話は変わりますが、近所のスーパーで何気なく買った昆布茶がとても美味でこのところ毎日飲んでいます.万が一売り切れると困るので商品名は書きませんが、原材料は北海道の根昆布と天然の塩のみ.最初に一口飲んで 「あぁやっと理想の昆布茶が見つかった」 と思いました.お気に入りはこの昆布茶に福井産の白干し梅(梅を塩だけで漬けた梅干)を丸ごと一個投入して頂く飲み方です.一日の終わりに飲むとホッとします.
 

 さて、明日からいよいよ別府で、明後日からコンサートと合宿が始まります.今日は門下生たちを集めて最後の弾き合いをしました.普段は人前に出るとおとなしい教え子たちもさすがに今日は少し緊張感がありました.それはともかくとして、こうしてそれぞれが同じ目標に向かって真剣に打ち込んでいる様子はなかなか美しいもんだなと思いました.
 
ちなみに門下生による発表会は19日(土)12時00分から、リサイタルは同日16時00分からで、いずれも 冨士屋 Gallery 一也百 にて開催させて頂きます.お近くの方は是非お運びください!

 

数ヶ月ぶりに近所の公園のカモを眺めて和んできました.
いやぁ、まったく‥言葉を失うほど心が和みました.
 
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つるが海響コンサートから別府の音楽合宿へ

 ようやく3月になりました.「ようやく」と書くのは例年12月から2月にかけてあらゆる仕事が立て込むためで、だから取り立ててどうというわけではないのですが‥それでも無事に3月を迎えられるとなんとも言えない安堵感を覚えてしまいます.
 
 さて、つるが海響コンサート2016 ENJOYピアノ協奏曲 にいらしてくださった皆さま、有り難うございました.オーケストラとのピアノコンチェルトが聴けるということもあってか、1階席には立ち見も出ていましたね.
 
 しかしながら、言うまでもなく、音楽会はプレイヤーと聴衆だけでは成立しません.今回の公演では、ぽーとあい敦賀市文芸協会、つるが海響コンサート実行委員会の皆さまをはじめ、この企画に賛同してくださった多くの方々が知恵を出し合って協力されたと伺っています.さらに僕の目の届く範囲だけで公演当日にどれだけ多くの方が動いてくださったか‥本当に頭の下がる思いです.
 
 そして、この公演で福井大学医学部管弦楽団(指揮:高谷光信氏)の水準の高さに驚かれた方も多いことと思います、何を隠そう僕もその一人です.医学部の勉強とオーケストラとの両立は聞けば聞くほど困難を極めるものだそうですが、彼らのパフォーマンスは専門家をも凌駕するほどの直向きさと音楽の歓びに溢れていました.今回、一奏者としてまた新たに学ぶきっかけを頂けたことに感謝すると同時に、地元福井にこのような生きた音楽を奏でる学生オーケストラがあることを心から誇りに思っています.

 

前日のリハーサルの様子.この日はオケに感化され閉館まで一人でさらいました.

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 ところで、今月の18~21日は別府は鉄輪にて門下生や卒業生を集めて初の音楽合宿を行います.メインは19日(土)、大分の文化財にも指定されている冨士屋 Gallery 一也百 にて開催される17名の教え子たちによる発表会とピアノリサイタルです.
 
 ちなみに冨士屋さんとはかれこれ10年来のお付き合いですが、もともと別府市は桐朋学園大学在学中に参加したアルゲリッチ音楽祭がきっかけで因縁浅からぬ場所となった経緯があります.今度の合宿中にはコンサート以外にも皆で名物の地獄蒸し(料理)を体験したりグループレッスン等を予定していますが、こちらも学生時代(!)からお世話になっている長いお付き合いの現地の皆さんがスタッフとしてサポートしてくださいます.本当に有り難いことですね.
 

 今週末からまたイベントが続きますが、体調に気を付けてしっかり頑張ろうと思います.皆さまもくれぐれもお大事にお過ごしください.

 

3年ぶりの別府公演、お近くの方はぜひ!

20160319