ピアノ合宿 in 別府 ~ 講座&グループレッスン編 その1

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 ピアノ合宿の2日目は朝から夕方まで、じっくり時間をかけて講座やグループレッスンを行いました.
 
 まず午前中は、2, 3名ずつの班に分かれて予め指定した課題を含むいくつかの作品を分析してもらい、ランダムに発表しながら皆でより良い演奏のあり方を模索しました.ただし、「分析」 という言葉で拒絶反応を起こされたり、逆にヘンにのめり込まれても困るので、楽曲分析はあくまでも実践を重視した基本的なものに留めました.
 
 一例を挙げると、メロディーラインや縦の音の配列から作曲家の想定した具体的な響きを想像することや、作品全体、或いは各パラグラフ・フレーズの中心点(重心)を見据えて、前後の音楽的なエネルギーの変化を考察すること等 ─ もっとも、和声分析をはじめ入念なアナリーゼによって得ることのできるある種の作品への理解の深まりを否定はしませんが ─ 今回はあくまでもホールのピアノを使いながら、自分たちの解釈がどのように響き渡るのかをリアルタイムに実感してもらうことを主目的としました.

 

前日にコンサートをしたホールなので緊張感があります‥
 
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 ちなみに、取り上げた作品は、マスカーニの「間奏曲」 (オペラ 『カヴァレリア・ルスティカーナ』 でおなじみですが、原曲はなんとピアノという‥)、ブルグミュラーの18の練習曲から「アジタート」、「ゴンドラ漕ぎの歌」、そしてモーツァルトのソナタK. 311 の第2楽章の計4曲です.自分で選んでおきながらなんですが、正直、物足りなさを感じるであろう選曲であることは否めません.というのも、いずれも弾き方さえ教えれば小学生でも演奏は可能で、音大生なら初見で弾けてもおかしくないような曲だからです.
 
 ところがどっこい、実際にやってみるとたったこれだけの課題でもほぼすべての曲でタイムオーバー.とはいえ、まぁそれほど驚くことでもありません.そもそも、いざその場で楽譜を渡されて自力で一から音楽を構築していくとなると、思ったほどは曲のイメージが頭に浮かんでこないものです.ましてや演奏ともなれば、作品云々より自分の弾き方が聴き手にどんな印象を与えているかに気を取られてしまい、音楽の内容を伝えたり共に愉しむどころでなくなってしまう.良し悪しは別として、それが普通です.でも、もしも事情を知らない方がこの場に同席されていたら、「前日の発表会ではもっと難しい作品をのびのびと演奏していたのに一体どうして?」 と不思議に思われたかもしれません‥
 

 もうお分かりかと思いますが、これが今の一般的な生徒たちの本当の意味での 「音楽の実力」 と僕は認識しています.もちろん、一人一人がこれから変わろうと努力すれば良いわけで、現状をそこまで悲観したり嘆くつもりはありません.それに、ここに至るまでの教育や社会的背景を考えれば、決して彼らばかりに問題があると責めることはできません.けれども、いずれにせよ、このままいつまでも借り物の演奏を続けたり、先生のアドヴァイスをただ素直に聞くばかりでは、音楽をするうえでもっとも大切で不可欠なスキルを身につけることのないままクラスを卒業していくことになる.それだけは絶対に避けたいので、僕は彼らが自分たちの課題と正面から向き合い、それを克服するために必要な経験を自発的に重ねていくきっかけを与えたいと常に考えています.そしてこの合宿ではそれを今の僕なりに精一杯体現したつもりです.果たして伝わったのか、届いたのかは残念ながらまだ少し懐疑的ですが(なにしろ初めてなものですから).

 
 ちなみに、念のためですが、上記の 「経験」 とは、ひたすら難しい作品にチャレンジしたり、早く曲をマスターするために初見の能力を鍛えるといった荒業のことを指すのではありません.僕が自分の教え子に望んでいることは、あくまで音楽に深く共感したり、心から感動できる要素を自らの力で作品の中から見つけだせるようになることです.したがって、より重視するのは音楽作品そのものに対する洞察力や想像力を高めるための実践的な経験です.
 

 経験 ─ 体験したことから自ら学んだこと ─ が、その人の 「感性」 や 「審美眼」 に影響するのであれば、長くピアノを続けていくにあたって、意義のある経験を積むことがいかに大切であるかは自明です.それぞれのライフステージよって感じ方は異なるでしょうが、生徒たちがその時その時に本当に伝えたいもの、或いは伝えるべきことを自覚し、自分なりの音楽のヴィジョンを持つ─ もっともこれが本来のクラシック音楽の演奏の初めの一歩となるのでしょうが ─ そうして自身の力で音楽と共に歩んで行けるようになってくれたら本望です.

 

 と、つらつら書いているうちに疲れてきたので、グループレッスンについてはまた改めて.

 

(つづく‥)

2件のコメント

  1. この度は、
    音楽を専門に学んでいる方達とのピアノ合宿(発表会&グループレッスンなど)に参加させていただきまして、
    とても嬉しかったです…みんなかわいい子ども達。

    スタッフの方達にも大変お世話になりました。
    お料理(地獄蒸し)なども素晴らしかったです。

    たくさん楽しい思い出ができました。
    このような機会を作ってくださりまして、
    本当に有難うございました(^_^)!

  2. おばちゃまさん
    こちらこそ参加してくださり有り難うございました!本当にみんな若いですよね(^_^; 僕にとっても思い出深い滞在になりました.またチャンスがあれば是非!

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