20210916

歩む道

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 「自分を高めていくためにこの道を選んだ。憧れているだけでは駄目。
  自分を変えていく努力が不可欠」

 どこのお偉いさんがおっしゃったのかと思ったら、なんと自分。3年前の講演の書き起こし。穴があったら、いやなくてもどこかに入ってしまいたい。口はなんとかの元。当時わざわざ来てくれた未来の音楽家たちに、どこか申し訳ない。でも、なんとかを転じて福となすという言葉もあるか‥

 閑話休題

 先週末、のっぴきならない用事があって約1ヶ月ぶりに電車に乗って都心に繰り出したのですが、時刻を調べるアプリの操作に手間取ったり、乗り換えの駅構内で迷子になりかけるなどそれはそれは大変な思いをしました。しょっちゅう利用していた頃は、ほかの考え事をしていても気がつけば目的地に辿りつけたものですけどね。短期間のうちにこんなにも感覚が鈍ってしまうことに純粋に驚きましたが、一方で、無意識という名のパターナリズムに誘導されていたのかと思うとそれはそれで怖い。

 でもほんとうに大変な思いをしたのは街の匂いです。うまく表現できませんが、妙に独特に感じました。入院を終えて退院した日に感じるあれ。海外から帰国して空港を降りた時に感じるあれ。いろんな匂いがごちゃまぜで、かつその一つ一つが違和感と共に明瞭に、くっきりと感じられる ― 不織布マスクはウィルスには一定の効果があっても、残念ながらにおいの粒子を防ぐことはできないようです(個人的見解です)。

 そんなわけで、少しだけ便利でオートマティックな感覚の鈍化と、さほど必要性の感じられないセンスが無駄に研ぎ澄まされるという不条理を同時に味わったためにその日は半日でヘトヘトに疲れてしまいました。ちなみに翌日は自家製パセリジュースでこころとからだの浄化を図るも、思いのほかおいしくできたために飲み過ぎて中毒を起こし、貴重な手話のレッスンをスキップしました。パセリがお好きな方はくれぐれもご注意ください。

 
 長くなりましたが、要するにこの夏はパッとしなかったのです。控えめに言ってもすこぶる調子がわるかった。でも最近はまた新たな執筆に取り掛かかったり(実は締め切りが迫っている!)、コンチェルトをていねいにさらい直したりしています。正直、こうした地道な取り組みが何につながってゆくのか皆目見当がつかないし、評価や実績はともかく、あくまで自身の心に従ってつくりあげるものが果たして期待に沿うものかどうか‥不安は尽きません。

 ただ、どのような結果に転がろうと、歩むべき道を歩んでいればちゃんと人生を堪能して終えられると思うので、今後もその時々のペースで前に進んでいくつもりです。いつものことですね。

 家の整理をしていたら今年亡くなられた小川英雄校長先生(高校時代の大恩人)が贈ってくださった詩がひょっこり出てきて、あらためて感銘深く読みました。今の僕には当時とはまた違ったふうに感じられますが、それもまたおもしろいなぁと。

 

地上には大小の道がたくさん通じている
しかし、みな目ざすところは同じだ

馬で行くことも、車で行くことも
二人で行くことも、三人で行くこともできる
だが、最後の一歩は
自分ひとりで歩かねばならない

だから、どんなにつらいことでも
ひとりでするということにまさる
知恵もなければ
能力もない

ヘルマン・ヘッセ 『独り』(訳:高橋健二)
 
 

写真の説明
自主隔離中?はガラクタを捨てたり欠けた陶器の補修をしたり‥
アルミ製の鍋は母と祖母が使っていたもので30年は経っていると思います。
当て木に使っているのは、以前このブログにアップした庭に生えた謎の木です。

 

4件のコメント

  1. 「のっぴきならない」が分からなくて(参考程度に)またネットで調べてみました…先生はいろいろ言葉を知っているのですね。

    街の匂い!?そんなするかなぁ?
    私のウチは(田舎だけど)街に住んでいるので、試しに外に出て匂いかいでみました…が、別にとくに匂いしない。
    マスクもはずしたけれど。コロナでもないのに。

    あと、
    ヘルマン・ヘッセの詩で、
    「みな目ざすところは同じだ」がよく分からないのですが…、
    「どこだ??」って感じで。
    独り(←自分自身の力)で乗り越えて行く、といった意味ですよね?

    どこを目指しているのか?よく分かりません。先生よかったら教えてください( `・∀・´)ノ ヨロシクー!!

  2. ちょうど先週ヘルマン・ヘッセの「春の嵐」を読み終え、
    先生はどうされているかなと思っていたところです。
    畳のお部屋素敵ですね。たまには新しい畳の匂いを吸い込みたいです。

  3. 川村さん、こんにちは!
    台風一過で暑いですね。そちらは被害は大丈夫でしたか?

    ブログのお写真から床の間とお茶碗が目に飛び込んで来て、「川村さん、おうちでお茶会!?」と思ったのですが、とんかちとノコギリも映っていてこれは違うなと(苦笑)。
    私は学生時代に茶道クラブに所属していたので、以前はよく家でも茶筅でお茶を立てたりしていました。おうちでお抹茶、心が落ち着きますよネ^^美味しい和菓子なんかがあれば尚良しです♪
    最近はこんな状況で抹茶を買いに行くことすら出来にくい状況で、「コロナめ!」と思っていますが、また気軽に買いに行ける時が来ればいいなぁ・・・と心から思っています。

    マスクで匂いは防げない、これなんか分かります。
    以前、相談業務で二日酔いの方と相談したことがあったのですが、マスクをしていてもアルコールの匂いが突き刺さって来て、こちらが酔っ払いそうになりましたよ(苦笑)。

    パセリの件、大丈夫ですか?パセリって案外怖いのですね。
    知りませんでした。とり過ぎ注意ですね。

    執筆活動もお疲れさまです。
    締め切りが迫っているのにブログにエントリーしているということは・・・、「川村さん、逃避ですか!?」(笑)。
    無事に終了することを祈っています!
    頑張って下さいね^^
    私もお仕事頑張りま~す。アヤ

  4. ちゃまさん
    >「みな目ざすところは同じだ」がよく分からないのですが…、
    生の最後のことをあらわしていると思います。終わりを見据えて今を生きるとまた心持も変わるのではないでしょうか。

    匿名さん
    「春の嵐」ですか、私は「孤独者の音楽」を読み終えました。高校時代を思い返しながら、あらためて『自分とはなにか?(「何者か」ではなく)』を考えております。

    Ayaさん
    確かに逃避モードだったかもしれません‥おかげさまで無事に入校・校正を終えることができ晴れて自由の身と相成りました笑

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