20211218

自由に弾く

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 集大成と言っても過言ではないピアノコンチェルトを弾き終えて一夜が明けました。あっという間に終わってしまいましたが、本番のステージではこれまでになく自由に弾きました。もっとも最初からそのつもりで、射程範囲を広げることに努めながら準備をしてきました。

 ところで、自由に弾くと言うといかにも奔放でお気楽な感じに思われるかもしれませんが、そもそも自由とは、気苦労や悲しみのない状態ではなく、それらを引き受けて堂々と立ち続けることを指します。僕の場合、聴こえの問題によって、しなくてもいい苦労までしているような気に苛まれたり、自分の奏でる音すら満足にキャッチできないことも少なくないため嫌でもネガティブな側面と向き合わざるを得ない。でも、それらすべてを引き受けてはじめて自由に弾くということが可能になるのだとようやくこの齢になってわかってきた気がします。
 
 
 ちなみにコンチェルトは一般的にはソリストがリードしてゆくものですが、今回のチャイコフスキーはマエストロやメンバーの皆さんのフォローなしには最後まで弾ききれなかったように思います。プロフェッショナルズオーケストラ多摩がいかに優れた奏者の集まりであるかは僕が書くまでもありませんが、リハーサルから本番に至るまでとても良い雰囲気を作っていただいて心から感謝をしています。

 そして遠方から聴きにいらしてくださった皆さまは ― 会場での密を避けるために直接お目にかかることはできませんでしたが ― きっとさまざまにご感想を抱かれたのではないかと思います。僕と同じようにライヴならではの臨場感を肌で感じ取っていただけたならとても嬉しいです。
 
 他にもここに書ききれないほどたくさんの方々に身に余るご支援をいただきましたが、これからも一音楽家として、そして人としてさらに向上していくことでご恩返しをさせていただく所存です。今後ともどうかあたたかく見守っていただければ幸いです。
 
 ありがとうございました!

 
  
写真の説明
楽屋の前にとりどりのお花がならぶ光景を久しぶりに楽しみました。
桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室仙台教室 講師一同様、
HANAIプロダクション様、ほか皆々様、素敵なお花をありがとうございました。

 

6件のコメント

  1. オーケストラも川村先生もとっても素晴らしかったです!!

    そうですよね、
    最初っから自由なんてない、
    いろいろな制約があったり、
    紆余曲折を乗り越え(?)た上での自由ですよね、

    アンコールのブラームスのワルツ第15番は大好きな曲です♪
    ピアノで弾いてます!

  2. 川村さん、こんにちは。
    昨日のハミングホールでの演奏会、私も聴きに行かせて頂きました^^

    まず、このコロナ禍の中、無事に演奏会を開くことが出来たこと本当に良かったですね。
    川村さんはじめ、指揮者の方や楽団の方々も嬉しかったのではないでしょうか。
    私も演奏を聴きに行くことが出来て本当に嬉しかったです。

    今回の演奏会、川村さんはどんなふうにピアノを演奏されるのかな?と思いながら会場に向かいました。
    耳は大丈夫なのかな?演奏に支障はないのかな?と色々自分なりにあれこれ考えていたのですが、実際に演奏を聴かせて頂いてそのような不安はどこかへ吹っ飛び、一気に曲の中に惹きこまれていきました。

    川村さんが奏でるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は2009年のミューザ川崎で聴かせて頂きました。その時も素晴らしかったですが今回も大きな感動を味わえました。

    オーケストラのドヴォルザークの交響曲もとても良かったです。
    オーケストラの生演奏はなかなか聴く機会がありませんのでとても良いひとときでした。

    私の想像をはるかに超える様々な事が川村さんにあったことと思いますが、こうしてオーケストラと共演してピアノをまた演奏されるそのお姿を拝見でき、個人的に心から嬉しく思っています。

    これからもどうか川村さんのピアノの音色を響かせてください!
    私も楽しみにまた聴かせて頂きます。

    昨日は本当にお疲れさまでした!アヤ

  3. あ、言い忘れました、、

    改めて…川村先生、
    見事に復帰!
    ♪♪おめでとう♪♪

    これからもだんだんと
    ご自身のペースで演奏活動などを再開されていってくださいね。
    応援しています!

  4. お疲れ様でした。
    近場でしたので、姉と2人、自転車で伺いました🚴‍♀️
    コロナ禍になり初めて伺うリサイタルが川村さんで嬉しかったです。
    非常に安易な表現ですが、音楽は他の何にも変え難く、やっぱりいいですね!! 
    どうかくれぐれもご自愛下さいませ。
    またの機会を楽しみにしています♪

  5. 土曜日は素晴らしい演奏をありがとうございました。
    私はオーケストラの一員として、ご一緒させていただきました。

    川村さんの紡ぐ音に引き込まれるような数日間でした…

    3年近く思うように弾くことができず、まだそれが解決したわけではないのですが、今ここにこうしていられることへの感謝はもちろん、すべてを受け入れて納得できたような気がして、私にとって特別な時間を過ごすことができました。

    自由に弾く…私もこの言葉を大切に使わせていただきたいなと思います。

    リハ,本番と私にとってかけがえのない時を共有できたこと、あらためて感謝の気持ちです。
    ありがとうございました!

  6. ちゃまさん
    ありがとうございます!
    >いろいろな制約があったり、紆余曲折を乗り越え(?)た上での自由
    うーん、言葉の綾ではありませんが、乗り越えるというよりは引き受けるかな。障壁を乗り越えるとか闘病ということばを聞くとなんとなくモヤモヤしてしまう僕です💦

    Ayaさん
    いらしていただきありがとうございました。2009年に演奏していたことをすっかり忘れていました。その頃、人生最大の暗黒時代だったんですよ‥でも嫌なことはすぐ忘れるたちなので今はオーケーです(笑)とにかく再びコンチェルトを演奏出来て僕もほんとうに嬉しかったです。

    吉井さん
    従前のスタイルを基準にできない。ピアノと向き合うにあたって否が応でも自ら変化することを余儀なくされたことは結果として僕にとっては悪くはなかったと思っています。いろいろな意味で、ほんとうに僕は変わりました。が、音楽のかけがえのなさは以前にも増して強く実感しています。

    なおんさん
    こちらこそご共演させていただくことができ、感謝しております。思うように弾けることだけがすばらしいのではない。うまくいかなさにも意味がある、いや、むしろそこに大切なヒントがある。そんなふうに思えるようになりたいです。またどこかでご一緒できる機会があることを楽しみにしております。

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