意識的にあまり周知をしていなかったのですが、おかげさまで第12回伊豆大島マラソンを完走することができました。
伊豆大島を一周するこのフルマラソンは最大標高差365m・獲得標高785m ― ちなみに国内の主なフルマラソンで最もアップダウンが激しく難易度の高いと言われる榛名湖マラソン(群馬)の獲得標高は569mです ― フラットな道がほとんどないということは事前に把握はしていましたが、実際のところどれくらいキツいのかは走ってみなければわかりません。
‥というわけで10月下旬にエントリーしました。ベテランランナーの友人をして「初めてのフル(マラソン)で伊豆大島は正気の沙汰ではない」と言わしめ、友情に亀裂が入りそうになったことが昨日のことのように思い出されます‥苦笑
この伊豆大島マラソンは変化に富んだ、といえば聞こえは良いのですが、容赦なくハードな坂道を繰り返すコースが文字通り山あり谷ありで、まるで僕の人生さながらではないか?と妙な親和性を覚える場面がいくつもありました。
今回のフルマラソンでとりわけ印象に残ったことを2つ記しておこうと思います。1つは島民の皆さんがとてもあたたかかったことです。スタート後まもなく僕はどのグループにも入れず単独で走ることになってしまいましたが、それでもご自宅の前から、畑の真ん中から、島のおじいちゃんやおばあちゃん、子どもたちがこちらに向かって手を振ったり拍手を送って励ましてくれました。
誰がどこで生まれたかとか、どのような過去を持っているかに関係なく、大島に住む人々はひとり一人のランナーに向かって平等にあたたかいエールを送られます。とりわけ終盤のアップダウンでは足が言うことをきかなくなり歩かざるを得なかったのですが、通りすがりの島民の方まで声をかけてくださるので正直涙をこらえるほうが大変でした。
記録や実績がすべてではないと腹の底から思えましたし、こんなふうに掛け値なしで支えてくださる人が世の中にいる限り、抱えている「困難」はチャレンジをしなくて良い理由にはなり得ないということを再認識しました。
そして2つめは27.5㎞地点にある波浮港見晴台(はぶみなとみはらしだい)でふるまわれた手作りのおにぎり。見るからに変哲のない鮭おにぎりでしたが、それは良い意味で期待を裏切られたという言葉以上のものでした。
最近はそれとなく人にお伝えしていますが、僕はそもそも贅沢なお料理や食品のブランディングがあまり好きではありません ― 文化として受け継がれる土地土地の食材や郷土料理には興味があります ― ボランティアの方々が心を込めて作ってくださったこのおにぎりの味は、食べるという行為が生きることにダイレクトに結びついていることを思い出させてくれたという意味で、生涯忘れることはないと思います。
師走になり、世間もあわただしくなってきました。皆さまどうぞ良い週末をお過ごしください。