ピアノときどきアンサンブルetc.

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最近、ある方に現在の仕事の内容と今後の方向性について意見を伺ったところ、
「ある意味、川村さんがやっていることは結果的にベンチャーだと思うんですよ‥」
と言われ ─ その時はピンとこなかったものの今は妙に納得、そんな今日この頃です.
 

自分の気もちに正直に書くと、僕はフリーター兼フリーランスではあるけれども、
音楽をビジネスとして自身の収入や事業拡大に繋げていこうとはあまり考えていない.
そもそもそうした商業的野心が決定的に欠落している自覚だけは人一倍あるから、
業界ではチャンスとされるイベントに限って敬遠してしまう.我ながら呆れますが‥
 
でも、それがどれだけ幸せなことか、どれだけの苦労やリスクを背負うことかはさておいて、
僕はどこか生の音楽や教育をほんとうに必要としている人たちへ届けることが自分の務め
と信じていて、気が付いたら、周囲が沸き上るようなことを成し遂げる必要性や価値観を
持たないまま、ご縁でここまでやってきたのだろうと思います.念のためですが、向上心が
ないわけではありません.鍛練を怠るところに良い音楽が生まれることはあり得えないので.
 
もっともベンチャーという言葉そのものをあまりよく知らなかったというか、実をいうと
今もよくわかっていないのですが、活動内容としては確かにそうとも言えなくもない.
 
とはいえ看板がお店でないのと同じように、 「ピアニスト」 や 「指導者」 という呼称だって
ただの肩書きであって僕自身ではありませんから、別になんだっていいんだと思います、、笑

 

さて、下旬と来月の公演プログラムが決まり、目まぐるしくも今年度の最終盤にこぎ着けました.
水戸芸術館にて出演させて頂くコンサートではチェロ、バソン、ヴァイオリンのメンバーと
共にデュオやトリオ等も演奏します.ちなみにエルガーを同メンバーと4人で演奏するため、
今回初めて編曲に挑戦しました.なかなか時間が取れないので暮れから合間を縫っては書いて
いたのですが、それを今日、ようやく皆で合わせてみました.意見を出し合っていくつか修正は
したものの、自分で言うのもなんですが、なかなかどうしていい具合になりました.もちろん
実力派のメンバーに救われている感は多分にありますが、いずれにせよ本番が楽しみです.
 
メイン曲でもある有名なメンデルスゾーンのピアノトリオ第1番も実は今回が初めて.なにしろ僕は
30代前半頃までは室内楽をさせて頂く機会をほとんど持たなかったので、まぁ初めてづくしで大変
ですが、それだけに練習では興味が尽きることなくとても密度の高い時間を過ごすことができました.

 

それであらためて思い至ったのは、ピアノを弾く行為そのものはやはり手段に過ぎないということ.
こと室内楽となると、楽器としてのピアノは良くも悪くも一個の媒体でしかない ─ これはソロにも
言えることですが、弾きながらその音楽が一つの生命体のように感じられる瞬間は自分自身の
中で 「今、弾いている」 という感覚がどこかにいってしまう.下手をするとそこにある音楽以外、
自分も含めて一切がどうでもよくなってしまう.それほどに 「音楽」 の存在感が大きく感じられる
ということです.音楽のマインドが技術や知性よりいかに大切であるかをあらためて痛感しました.
 

個人的には、演奏を聴いてくださる方たちにもそういうふうに生の音楽を愉しんで欲しいし、
これからも勉強を重ねてそうした感覚を育むきっかけづくりができればと思っています.

 
 

春を感じに散歩にでも行きたいけれど、今は庭に出るのが精いっぱい.

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3件のコメント

  1. 今回のエントリーのタイトルを見て、私だったら「ピアノときどきマジック鑑賞」だわと思ったり・・・(笑)。

    こんばんは。

    そうそう、川村さん、あのね(小声で)。
    フリーターには年齢制限の定義がありまして、15歳から34歳までの方を指すようですヨ☆
    スミマセン、職業柄そういうことに関しては敏感でして・・・(苦笑)。
    ちょっとしたマメ知識でした☆

    川村さんの音楽に対する考え方、とても共感します。
    ビジネスや収入にはとらわれず、本当に必要としている人たちへ届けることを務めとおもっていらっしゃる。すごいと思います。
    私も仕事上利益を追求するというよりはむしろその逆で、無償の愛ではないですが困っている人たちに惜しみなく手を差し伸べるような仕事をしていますので、気持ちがとても良く分かります。

    それでも最近、ベッカーという方の「人的資本論」というものを学習し、自分に投資した分は将来の給与や賃金や利益で回収するべきという考え方も知り、世の中には色々な理論があるのだなぁ・・・と感じたりもしています☆

    室内楽は、色々とご苦労もあるでしょうが楽しく有意義な練習時間を過ごされている様子ですね!
    このような経験が、また次の音楽活動の糧に繋がっていくのでしょうね。
    28日のサントリーホール、とても楽しみにしていて行く気満々だったのですが、2月の予定表でその日私は休日出勤になってしまいました(涙)。
    久しぶりの川村さんの演奏でしたのに・・・。すごく残念です。
    6月の白寿さんには行かれるようにしたいです。本当に。

    すべての演奏会が上手く運びますように。
    そして年度末を無事過ごすことが出来ますように。
    応援しております。アヤ

  2.  こんばんは。
    私、メンデルスゾーンのトリオ第1番第1楽章、第2楽章、弾いたことあります!(本当です!笑)いい曲ですよね,あのぞくぞくする旋律、メンコンもそうだけれど超一級品!その演奏をある先生が聴きにいらして下さり、「何だか知らないけれどとてもよかったわ!」とお褒め下さって、皆で大笑いして…いい思い出です。その時のメンバーでもう一度、というのは今は不可能なので、まさに一期一会です、寂しいことですが。
    映画ですが、先日、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を観てもう大感激でした、5時間の上映時間って、どうなってしまうのかしら、と恐る恐るでしたが、あっと言う間に終わってしまってびっくり。歌唱、見事な5重唱、華やかな舞台に引き込まれ、実在の人物だったというハンス・ザックスにも魅せられました、涙、音楽っていいですね!

  3. Ayaさん
    そうだったんですか?それでは僕は中年フリーターということですかね.役職や肩書、呼び名はまぁなんでもいいんですけど(-“- 個人的に「ビジネス」という言葉は胡散臭くて大嫌いです.そもそもbusy-nessですからね.でも、自分がやっている仕事がそれほど尊いかというと、突き詰めてゆくとこれはこれで究極の自己満足だとも思ってしまうんです、、汗 6月にお会いできることを楽しみにしています.

    匿名希望さん
    音楽三昧の生活とっても羨ましいです.「一期一会」、「無常」は自然の摂理のようなものですから深く考えないほうがいいですよ.昨日と今日の僕は同じではないし、とにかく毎日変化して毎日生まれ変わっているものです、人間というのは.でも今やるべきことを常に全力で悔いのないものにしたいという気持ちはありますね.そうすればいつ死んでも構わない‥おっと飛躍しすぎましたね、、笑

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